本屋のひとりごと 31 おすすめします「蒼氓」石川達三 著
下記の文章は2014年に注文書を付けてチラシの形にして配布したものです。
この度第一回芥川賞受賞作「蒼氓(そうぼう)」が復刊されました。
横手市出身の石川達三が著した「蒼氓」は、社会派作家として知られた石川の原点ともいえる作品です。
昭和初期にブラジル移民として全国から神戸の国立海外移民収容所に集まった民衆が、
不安と期待の中で過ごす出港までの8日間を描き、第一回芥川賞に太宰治らの作品を抑えて輝きました。
その後、移民船内を描いた「南海航路」、辛苦に耐えながらたくましく働き出す「声無き民」を加えた3部作の長編として発表されました。
現在は絶版となっていますが、いま一度多くの人にこの名作に触れてもらおうと秋田魁新報社から復刊されました。久米正雄らによる選評や菊池寛の賛辞を再録した「芥川龍之介賞経緯」のほか、日本ペンクラブ会長も務めた石川の足跡や略年譜を収載しています。
秋田に住んで30年になります。来た当初から秋田に関わる本を探して読んでいます。
身内には「私より秋田の事を知っている」云われます。
「蒼氓」を読んだのは10年位前でしたが、3年程前ある先生との話の中で「蒼氓」は短編で、
船の中の事が続いて書かれている事を知りました。
いろいろ探しましたが手に入れる事が出来ずにいた昨年、魁新報社から復刊されると聞きうれしく思いました。
『出会った時に手にしなければ、その本と二度と出会えない』の言葉の通り、
近年本の絶版は多くなっています。
石坂洋次郎「青い山脈」、矢田津世子「神楽坂 茶粥」他数え上げたらきりがありません。
どうぞこの機会に手にとって、そして孫の代まで本棚に置いておいて下さい。
秋田県人にとって、埋もれることが許されぬ本です
加賀谷龍二
2016年10月29日に
日本ペンクラブ+秋田県共催 「石川達三の秋田」が開催されます。
浅田次郎氏、西木正明氏、下重暁子氏、壇密氏等がお話されます。
秋田県民に石川達三がより認知されるよい機会となりますように。(「生きている兵隊」「青春の蹉跌」は文庫で流通しています)
下重暁子氏が来秋されます。過去に下記のPOPを作りました。
自分がどんな本を読んできたかを他人に話すことは、自分の精神生活をさらけ出すことになる。それを平気でやってしまうのは、鈍感か、自信家か。
それでも私は人に云う「この本は是非読んでくれ」
「鋼の女 最後のごぜ 小林ハル」
・・・ ごぜと鶏は死ぬまで唄わねばなんね。いい人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修業。
ここにいたって、私ども読者は、しかと認識する。ごぜは目の見えないハンディを背負ったその意味では同情すべき旅芸人。なれど、その芸は愛嬌芸ではない。熟練した技術を身につけて渡世をはかる、そのところでは他人からの同情をよせつけない生活者なのだ、と。(解説より)
現在この本は流通していません。